FXで破産した男の全記録|どん底から生還した実話に学ぶトレーダーの本質

A dark-toned image symbolizing the collapse and recovery of a forex trader.

「FXで、人生変えたい」

そう思ったことはないだろうか。

スマホひとつで、わずか数分の売買で、サラリーマンの月収を稼ぐ。

それが夢ではなく現実になったのが、大学時代に知り合った男だった。

最初は成功者だった。
誰よりも要領がよく、稼ぎ方もスマートだった。

だが、彼はその後、全てを失うことになる。

口座はゼロを超え、借金は数千万円。
家族にさえ見放され、自己破産。

なのに今、彼はまたトレードで生活を立て直し始めている。

この記事は、そんな彼の実話をベースにしている。
そして、ここに書かれているのはただの「失敗談」ではない。

むしろこの記事の本質は、FXの怖さと、再起できる人間の共通点にある。

「同じ失敗は絶対にしない」
「絶対に立ち直る」

このように思っているすべてのFXトレーダーにこそ、今読んでほしい。

目次

破綻するまでの経緯|なぜ彼はそこまで負けたのか

僕が彼と再会したのは、ある共通の知人の送別会だった。

大学時代は特に親しい関係ではなかったが、たまたまFXの話題になったとき、彼は言った。
「ああ、それ、俺も昔やってたよ。…で、破産したんだけどな」
一瞬、冗談かと思った。

でも、彼の目は笑っていなかった。

破綻に至るまでの道のりは、実はシンプルだった。
そして、ありがちでもある。

むしろ、あまりにもよくある流れだったからこそ、多くの人にとって他人事では済まされない。

彼はどうしてそこまで負けたのか。
このセクションでは、彼の失敗を段階的に振り返っていく。

A defeated FX trader sitting alone in a dark room after bankruptcy
The silence after financial ruin

初期の成功体験が狂わせたバランス感覚

最初は、誰でも少額から始める。彼も例外ではなかった。

だが、入金10万円が一晩で15万円になった。翌日はさらに20万円。

「これは、才能だ」と思った瞬間、地面は少しずつ崩れ始めていた。

リスクを取ればリターンが増える。それは事実だ。
だが、彼の取引には「検証」がなかった。
勝った理由を言語化できないまま、ロットだけが増えていく。

そのうち「10万円稼がないと意味がない」という感覚になった。
目標は毎日10万円。いつの間にか、FXは仕事ではなくギャンブルに近づいていった。

チャートに取り憑かれる日々と孤立

彼のスマホは常にチャートアプリが開かれていた。
会話中も、トイレ中も、寝る直前までチャート。
誰かと一緒にいるときでさえ、為替の動きに心が持っていかれる。

そうして、人間関係が崩れた。
最初は「成功すればまた会えばいい」と思っていた。
だが、そう簡単にいかない。誰もが離れていき、孤立が始まる。

しかも、孤立すればするほど、さらにトレードに逃げ込む。

結果、損失が加速する。

ロスカットを避けるためのナンピン地獄

決定的だったのは、「ナンピン」だった。
含み損を解消するために、逆方向にナンピン。
資金を倍々に投入して、反転を祈る。

一度、うまく助かったことがある。
だからやめられなかった。
でも、相場はそんなに優しくない。
ポンド円が一晩で8円動いたとき、彼の口座は一気に消えた。

追証。借金。返済。
そこから彼の「本当の地獄」が始まる。

破綻前夜の錯覚と崩壊の朝|冷静を失った男の末路

含み損が膨らんでいた。

証拠金維持率はあと数%。
それでも彼はナンピンを続けた。

ロットを下げれば、取り返せない。
勝てば戻る。いつもそうだった。
だから、止めなかった。

冷静ではなかった。
チャートは下がるどころか、さらに急騰した。
戻らない。動きが逆だと気づいたときには、既に遅かった。

その朝、口座残高はゼロ。
追証三百万円。
数年分の貯金は一瞬で消えた。

手は震え、吐き気がした。
チャート画面を閉じることすらできなかった。
勝てるはずだった。
いや、勝たなきゃいけなかった。

けれど、終わった。

誰も助けてはくれない

まずカード会社から連絡がきた。
返済不能なら、法的措置。
督促の電話は昼夜を問わず鳴り続けた。

親には言えなかった。
友人にも言えなかった。
いや、言ったところで意味はなかった。

孤立。
逃避。
無気力。

スマホは電源を落とした。
布団から出られない日が続いた。
夜に眠れず、昼に眠った。
チャートの音が、夢に出てきた。

SNSをすべて削除した。
連絡を絶った。
世間から消えた。

実家の居間にある時計の音だけが、やけに大きく聞こえた。
止まっていたのは、時間ではなく、自分だった。

破綻後に訪れた現実|トレーダーが社会的に死ぬということ

破産した直後、彼はLINEのグループをすべて退会した。

SNSもアカウントごと消した。
実家に戻り、昼夜逆転の生活を数週間。もちろん、チャートは見ない。

けれども、身体が勝手に覚えている。
午前9時、東京市場の寄付き。
午後4時、ロンドン勢の本格参入。
夜9時、ニューヨークの経済指標発表。
目を閉じても、時間になると脳が動き出す。

家族との関係、社会との断絶

勇気を振り絞って、破産したことを家族に伝えた。
最初に崩れたのは、家族との関係だった。

「自分でなんとかするって言ってたよな?」
「保証人にはならないよ?」

冷たいというより、呆れていた。
彼の父親は公務員。母親は学校職員。
安定した職業しか知らない家庭で、FXなんてギャンブルと同じだった。

その通りだった。

説明の余地すらなかった。
実際に、自分でも何が正しかったのかわからない。

友人関係はもっと壊れるのが早かった。
相談した相手は2人だけ。その2人とも、数ヶ月後には連絡が途絶えた。

誰も助けてはくれない。
助けようにも、彼は既に社会的に「死んでいた」

自己破産という選択肢に至るまで

追証は300万円以上。クレジットカードのキャッシング枠も使い切っていた。

彼はカード会社からの督促を無視し続け、ついに裁判所から通知が来た。

自己破産。

その言葉を初めて調べたのは、ロスカットから二週間後だった。

ネットに出てくる言葉は冷たかった。
甘え、責任逃れ、踏み倒し。
だが、彼に残された選択肢は他になかった。

無料相談に電話した。
弁護士との面談に行った。
取引履歴を提出した。
通帳も出した。
親の収入すら申告させられた。

書類は、山のようにあった。
そのすべてに、自分の無力さが記録されていた。

自己破産は簡単じゃない。

管財人がつき、すべての財産を申告しなければならない。もちろん、FX口座も対象だ。

「正直に言えばいい」と弁護士は言った。
でも、どこまで正直に言えばいいのか、本人もわからなかった。
過去の取引履歴を遡って提出しながら、自分がどれだけ狂っていたかを痛感したという。

そこに至って、ようやく「反省」ではなく、「理解」が始まった。

信用が消えたという感覚|立ち直れない現実

口座は凍結。
クレジットカードは強制解約。
就職活動をしても、履歴に傷が残る。
住宅ローンは組めない。
携帯の分割も通らない。

彼は、社会の「枠」からこぼれ落ちた。
人間としてではなく、「信用を持たない存在」として扱われた。

何かを申し込むたびに断られる。
理由は言われない。
でも、わかっている。
信用情報に、破産の履歴が載っているからだ。

これが、FXで破産するということだ。
勝てば賞賛される。
だが、負ければ社会から消される。

彼はようやく理解した。
これはゲームじゃない。
一発逆転でもない。
勝負をかける場ではなかった。

無気力の底|朝が来ても、起きる理由がなかった

朝になっても、布団から出ない。
いや、出る意味がなかった。
出ても誰にも会わない。
外に出ると、世界がまぶしすぎた。
自分だけ、世界から断絶されているような感覚だった。

腹は減るが、食欲はない。
コンビニに行くのも面倒だった。
電子レンジの音が、異様に大きく聞こえる。
テレビをつけても、すぐ消す。
何も頭に入ってこない。

スマホは机に伏せたまま。
通知音が鳴ると、心臓が跳ねた。
誰からの連絡も欲しくない。
でも、誰にも忘れられたくなかった。

それなのに、誰からも連絡は来なかった。
LINEは既読すらつかない。
SNSには、自分の居場所がなかった。

A focused FX trader analyzing charts at his desk during a quiet morning
Back to the charts. The quiet determination of a trader returning from ruin

意識の輪郭が曖昧になる日々

午前三時に寝て、昼過ぎに起きる。
シャワーを浴びる日と、浴びない日があった。
パジャマのまま三日過ごすこともあった。
時間の感覚が消えた。
曜日の区別もない。

体だけは生きていたが、思考は止まっていた。
何をしたいかもわからなかった。
何をすべきかもわからなかった。
「これから」という言葉に、全く現実味がなかった。

FXをもう一度やるか?
いや、それ以前に、生きていく気力すら残っていなかった。

外に出て働く気にはなれなかった。
履歴書を書こうとしても、手が止まった。
コンビニのバイトの求人ですら、エントリーできなかった。

自分はもう、何者でもない。
名刺もない。所属もない。信用もない。
誰ともつながっていない。
名前を呼ばれることもない。
必要とされることもない。

こんなに孤独なのに、誰にも見つけてもらえなかった。

「死ななかっただけマシか」それが唯一の実感だった

何もない部屋で、昼間から横になっていた。
雨の音だけが聞こえていた。
このまま終わってもいい、と思った日もあった。
でも、何もしないまま、ただ時間が過ぎていった。

本気で死ぬ勇気もなかった。
生きる意味もなかった。

ただ、日が暮れて、また朝が来るだけだった。

ふと思った。
自分は、生きているんじゃなく、死んでいないだけなんだと。

誰もが成功ストーリーを語りたがる。
でも、この記事で語るのは違う。
これは、FXで破綻した人間の、現実の記録だ。
栄光の前に、どれほど深く沈んだか。
その深さを知らずして、FXを語る資格はない。

久々の再会|沈黙の中で語られた「何もない」毎日

彼と再び会ったのは、大学時代の共通の知人の送別会だった。

居酒屋の奥のテーブル。彼は一番端に座っていて、ビールのグラスにほとんど手をつけていなかった。
目が合った。彼は小さくうなずいた。覚えていたらしい。

僕が隣に座ると、彼はぽつりと言った。

「元気そうだな。…俺?うん、まあ、生きてはいる」

少し話しただけで、どれだけ疲弊していたかがわかった。

口数は少ないが、目の奥が全く笑っていなかった。
大学時代のあの軽快さは消えていた。
ただの冗談も、どこか刺々しくなるような空気だった。

ふと聞いてみた。

「今、何してるの?」

少し間があって、彼は答えた。

「…何もしてない。いや、できない。もう何年も、何もしてない」

話した内容は少なかったが、重みがあった

その夜、深く語り合ったわけではない。
それでも、断片的に漏れてきた言葉の中に、彼の「深さ」があった。

「昼過ぎに起きて、意味もなくYouTube見て…結局、夜になっても何もしてない」
「時間が過ぎるのって、思った以上に怖いよ」
「カーテン開けるのに、一日かかる日もある」

酒は進まなかった。
彼はほとんど食べていなかった。

僕はその場で「また連絡するよ」と言った。

でも、心のどこかで思っていた。

もう一度連絡を取ることはないかもしれないと。
このまま、消えていってもおかしくない空気だった。

それでも彼はまだ、「誰かに会える場所」に来ていた

あのときの送別会に、彼が来たという事実。
それだけが、わずかな生きようとする意思の証だった気がする。

周囲は彼に気を遣っていた。
何をしていたのか、誰も聞かなかった。
けれど、誰も彼を責めることもなかった。

その沈黙の中で、彼は少しだけ笑った。

「今更誰かに話すことでもないけどさ。
…この感じ、ケンタはわかるだろ?」

僕は何も答えなかった。
けど、そのときだけは、彼の言葉にうなずいた。

動き出したきっかけ|本当に些細なことだった

送別会の数日後、彼からLINEが届いた。
「この前はありがとな。ちょっとずつでも、動こうとは思ってる」
短い文だった。

でも、前に進む意思を感じた。

僕は簡単に返信した。

「いつでも話そう。無理しなくていいから」

彼はすぐ既読をつけて、それっきりだった。
けれど、あの一通が、彼の中で何かを動かしたのだと思う。

An FX trader standing by the window looking out with quiet confidence
No longer afraid to lose. A man who found stability through failure

動く理由も目標もなかったが、止まりたくないとは思った

最初にやったのは、カーテンを開けることだったという。

それだけでも、最初は重労働だった。
外の光が、眩しすぎて気持ち悪かったと彼は言った。

次にやったのは、洗濯だった。

洗濯機を回す音が、うるさく感じた。
それでも、一歩ずつ、生活を取り戻し始めた。

アルバイトの面接にも行った。
落ちた。

履歴書の空白期間を問われ、答えられなかった。
でも、帰り道にコンビニでパンを買って帰れた。
前なら、落ち込んでそのまま寝込んでいた。

相場から離れ、ようやく「人間」に戻り始めた

数ヶ月後、彼は派遣で働き始めた。

最初は短期の軽作業。
誰とも会話はなかった。
でも、給料は振り込まれた。

その通知を見たとき、
初めて「また生きていいのかも」
と思えたと言っていた。

FXのことは、まだ話題に出さなかった。
でも、ある日、ふとこんなLINEが届いた。

また、チャート見てる。
まだエントリーはしないけどな

僕は驚かなかった。
むしろ、その日が来ることを、どこかで予感していた。

相場との再会|チャートを眺めるだけの日々

最初にチャートを開いた日は、ノートも何も用意しなかったという。

ただ、画面をぼんやりと眺めていた。

昔のように、どこで入るかを考えることはなかった。
むしろ、エントリーする勇気がなかった。
過去が蘇ってきた。

自分がどこで狂ったのか。

あのとき、なぜナンピンを止められなかったのか。
なぜ、ロスカットを認められなかったのか。
それを、ひとつずつ整理するように、チャートを見続けた。

毎晩一時間。

MT4を立ち上げて、過去チャートをスクショして、ノートに貼った。
その横に、もしこの場面で入っていたらどうなっていたか。

入るなら、どんな根拠が必要か。
書いた。毎日。半年間、エントリーせずに続けた。

もう一度やるべきか、それとも二度と触るべきじゃないのか

半年間、チャートを見続けた。
パターンも整理した。
自分の負け方も、何度も分析した。

だが、実際にポジションを持とうとすると、手が止まった。

「また、同じことになるんじゃないか」
「今は冷静でも、実弾を入れた瞬間に狂うんじゃないか」
「結局、自分はギャンブル体質なんじゃないか」

ノートに記録をつけながら、何度も自問自答した。
やれば、勝てる可能性はある。

でも、もう一度負けたら、今度こそ立ち直れない気がした。

僕にも連絡が来た。

「どう思う?もう一度やるのって、アリなのかな」
すぐに答えは返せなかった。
僕自身、彼の心がまだ脆いことがわかっていたからだ。

トレードをやらない選択ができるようになっていたか

一度だけ、彼はノートにこう書いたという。

「今の自分は、やらない自由を持っているか?」

破産前の彼は、チャンスがあるなら絶対にやっていた。
やらないという選択肢はなかった。
それが破滅につながった。

再起を本当に意味あるものにするには、

勝てそうでもやらない
感情が揺れたらスルーする

その強さがなければ、また同じ道を辿るだけだった。

一回だけ入ってみよう。ダメならすぐやめよう。

悩んだ末、彼は決めた。

一回だけ、過去半年で何度も出てきた「得意な形」が出たら入ってみる。

損切り幅は10pips
リスクは3000円
勝っても負けても、今日はそれで終わり。

その日は、エントリーの条件が揃った。
ドル円がロンドン時間に下落後、東京安値で反発。
15分足の戻り高値を抜け、下ヒゲ陽線で確定。

彼は1ロットでロングした。
30分後、目標の20pipsを達成。
ポジションを閉じた。

手は、少し震えていた。

けれど、負けていなかった。
それ以上に、「冷静でいられた」ことが嬉しかったという。

僕にLINEが来た。

「今日は勝った。でも、それ以上に、負けてない自分に驚いてる」

そこから、彼の「本当の再起」が始まった。

再開後、初めての連敗|「勝てる型」が通用しなかった瞬間

最初のトレードは勝った。
だが、そこからすぐに崩れた。

二回目、三回目、連続で負けた。

エントリーポイントは、半年間研究してきた得意パターンだったはず。
なのに、想定どおりに伸びない。
建値撤退すらできず、損切りになる。

チャートを見返した。

「なぜここで入ったのか」
「なぜ損切りになったのか」

書き出していくうちに、あることに気づいた。

負けたトレードは、全部「時間帯」がズレていた。
自分の型は、ロンドン立ち上がり限定だった。
東京時間や深夜に入っていたのは、ただ「やりたくなってしまったから」だった。

破綻前と同じ「欲」が、まだ残っていた。
それを突きつけられた。

負けた理由が、昔と同じだったことが悔しかった

「もうわかってると思ってた」
「昔の自分とは違うと思ってた」

でも、負けてみてわかった。
勝てるロジックではなく、勝てる「人格」が必要だった。
そこまで作り直さないと、何も変わらない。

LINEが届いた。

「3回負けた。まだ、自分の中に焦りがある。…悔しいけど、わかったよ」
「環境を変えなきゃ、また同じ場所に戻る」
彼の言葉に、あのときの「諦めたような目」はなかった。
負けているのに、冷静だった。
だからこそ、本物だと思えた。

もう一度、型を壊した|勝てるロジックの構造を探り直した

彼はノートの使い方を変えた。

今度は勝ったパターンではなく、「負けたパターン」だけを集めた。

そこにこそ、自分のクセが出る

勝った記録は、自分を過大評価させる。
だが、負けた記録は、自分の未熟さを突きつけてくる。

たとえば

・1時間足で方向が曖昧なときに入っていた
・エントリー後に指標が控えているのに突っ込んでいた
・伸びる前提で損切りを広げていた

こうした負け方が、破産前にも山のようにあった。
そして今回も、全く同じだった。

この記録を一つ一つ潰していくことで、ようやく型が勝てる構造に変わっていった。

僕・ケンタとのやり取り|3連敗のあと、彼は僕に相談してきた

LINEが来たのは、深夜1時を過ぎていた。

「やっぱり、難しいな。エントリー条件は揃ってたのに、勝てなかった。自分の型が甘いのか、相場が違うのか、わからない」

僕は、すぐに返した。
「で、そのトレード、何時に入った?」

昼の2時すぎ。
ロンドン前だったけど
タイミング的にいけると思った

「それ、東京時間でしょ。お前の型、ロンドン立ち上がりでしか機能してないんじゃない?」

既に彼のノートのスクショは何度も見ていた。
ロンドン立ち上がりの押し目や、ニューヨーク後半の反発は確かに勝率が高かった。
だが、昼の中途半端な時間帯に無理して入っていることが、何度も目についた。

「やりたくなったときこそ、やるな」
「勝てる形じゃなくて、入りたい気分で動いてる限り、何も変わらない」

そう返したとき、彼は少し時間を置いてからこう言った。

図星すぎて、返す言葉もない。
…やっぱ、感情の癖って消えないんだな

僕が伝えたのは、勝ち方じゃなく逃げ方だった

そのやりとりのあと、僕はこう付け加えた。

「勝ち方なんて、誰でも学べる」
「でも、逃げ方を知ってるやつは少ない。相場から、自分から、欲から」

僕がトレードで生き残ってこられた理由のひとつは、これだ。

負けそうなときに、潔く切れる。
チャンスでも、気分が乗ってなければ手を出さない。
勝ちたい日ほど、何もしない。

そう言うと、彼はしばらく既読をつけなかった。
でも次の日、またLINEが来た。

「今日はノートだけつけた。やりたいと思ったけど、あえて何もしなかった。…すげえしんどかったけど」

僕は「それが勝ちだよ」とだけ返した。

できない、わかっていてもまたやってしまう

僕とのLINEのあと、彼は一日だけ何もしないことに成功した。
だが、それは長くは続かなかった。
数日後、また連絡が来た。

「昨日、また入っちゃった。今度は勝ったけど…でも、正直、自信はなかった」
「入る理由、半分は暇だったからかもしれない」

僕は返した。

「それ、勝っても負けてるよ」
「ルール破って勝つと、次は破った方が勝てるって勘違いが始まる」

「それが破滅に繋がるの、もう経験済みだろ?」

彼は黙った。
数時間後、返事が来た。

「今、ノートにルール破りで勝った記録って書いた。…それが一番怖い勝ち方だった」

感情でトレードする癖は、何度も出てくる

翌週、また報告が来た。

「今週、3勝3敗。負けたトレード全部、夜10時以降」
「エントリー根拠、雑だった。エントリー後に理由を後付けしてた」
「やばい。昔の自分、戻ってきてる」

僕は冷静に伝えた。

「戻ってるんじゃなくて、ずっといるんだよ」
「それを出さずに済む環境をつくるんだ」

「人は、変わらない。ただ、出さない方法は学べる」

しばらく既読がつかなかった。
翌朝、彼から届いたのは、3枚のチャート画像と、ひと言。

「やっぱり、自分のルールって、守らないと意味ないな」

僕が送った一言が、少しだけ刺さったようだった

「自分の中に負けパターンのテンプレがあるって、認められるかどうかだよ」

この言葉を送ったあと、彼からこんな返事が来た。

「…それ、初めて言語化された気がする。俺の負けパターン、実はずっと一緒だった」
「見たらやりたくなるっていう、病気みたいな感情がある。それを処理できる仕組みがないだけ」

そこから、彼はルールをノートに書くのではなく、口に出すようにした。
チャートを見る前に「今の時間は入らない」
見てしまったら「今は休む。根拠が弱い」

誰にも聞かれていなくても、つぶやく。
「ルール」ではなく、自分との対話になっていた。

ルールを書き直す|まず「やらない条件」から組み上げた

以前の彼は「こうなったら入る」という基準ばかり作っていた。
だが、それでは感情に引っ張られる。

勝ちたいと思えば、条件を無理に当てはめてしまう。
それが破滅を招いていた。

だから、僕はこうアドバイスした。

「先にやってはいけない条件を全部リスト化しろ」
「勝つ方法より、負ける構造を潰す方が早い」

このとき彼に伝えたアドバイスの内容は、僕が書いたこちらの記事にもまとめてある。

トレードで大事なのは、強い通貨を買い、弱い通貨を売るという基本に立ち返ること。

そして、それが崩れたときに手を出さないルールを先に決めるという視点だ。

彼も、ここでようやく勝つための設計ではなく、負けないための制限を最優先に据えた。

ひとつずつ感情を管理し、逃げる設計を入れた

僕は彼にもうひとつ伝えた。

「勝率が高い人って、感情処理がうまいんじゃない」
「感情が暴れる前に逃げられるようにしてるだけなんだよ」

これは、以前彼に送った言葉でもあるし、記事としても整理してある。

【勝率が低くてもFXで勝ち続ける人は何を見ているのか】

この中で僕が書いたのは、勝つ人ほど、負けたときに回復が早いという構造。

一発の勝負ではなく、継続の中で勝率を管理している。

彼はそこから、ロジックの修正よりも、「自分が冷静でいられる場面だけを選ぶ」という考えに切り替えた。

ルールを守れた日は、勝ち負けに関係なくノートに丸をつけた。

守れなかった日は、金額に関係なく×を記録した。

「もう一度破産したら終わり」そう言わなくなっていた

昔の彼は、「次に負けたら終わる」「もう一度破産したら人生が終わる」と繰り返していた。
今は、そういう言葉を言わなくなっていた。
むしろ、こう言うようになっていた。

「別に負けてもいい。ただ、型を壊さなければ、全部戻せるから」
この言葉が出てきたとき、ようやく土台ができたと思えた。

トレードは、勝ち負けで人を測る世界だ。
でも本当に勝ち続ける人は、やらかした後の戻り方を持っている。
彼もようやく、そこに到達した。

月ベースで勝ち始めた頃の変化|静かな自信が生まれていた

ある日、彼からこんなLINEが来た。

「今月、+6.5%だった。特別なことはしてない。ただルール通りにやっただけ」
「やっと、やらないことが、成果に直結してるって実感できた」

破綻前は、月に20万円、30万円を稼ぐことが目標だった。

でも今は違った。

資金に対して数%、それが守れれば十分。
その数字よりも、「ルールを守った月だった」と言えることの方が価値があると、彼は言った。

トレード時間は減った。代わりに生活が整っていった

僕が少し驚いたのは、彼の生活リズムだった。
あれだけ昼夜逆転していた彼が、今は朝6時起床、夜11時には就寝。

トレードの時間も、ロンドン立ち上がりの1〜2時間に絞っていた。

「それ以外はノートまとめたり、録画したチャート見たり、本読んだりしてる」
「むしろ、トレードが生活の軸じゃなくなった」
彼はそう言った。

僕は彼に伝えた。

「その感覚、大事だよ。トレードは生活の一部にすぎない。逃げ場にしない限り、長く続けられる」
「勝ち続けるやつって、トレードの外側が整ってる」

これは、以前彼にも話した内容であり、僕自身が記事にも書いている。

ここで伝えているのは、相場の構造だけじゃない。
生活のボラティリティが高い人ほど、相場にも飲まれやすいという話。

彼が生活を整えたことは、結果的にトレードの安定につながっていた。

金額よりも、再現性を重視するようになっていた

彼が言った。

「10万円勝っても、たまたまなら意味がない。1万円でも、再現できる形で勝てた方が強いと思うようになった」

破綻前の彼なら、絶対に出てこない言葉だった。
昔は数字にしか興味がなかった。
勝った日は焼肉、負けた日は無言で帰宅。
感情と損益が、完全にリンクしていた。

今は違う。
勝っても騒がない。
負けても冷静。
その差が、チャートに表れていた。

僕が最後に伝えたアドバイス

月に3〜5%を安定して積み上げる彼に、僕はひとつだけこう伝えた。

「勝てるようになってからが、本当のスタートだよ」
「一番危ないのは、自分はもう大丈夫って思ったとき」

彼はすぐにこう返した。

「それ、今いちばん自分に言い聞かせてるやつだわ。だから、この記事もいつか自分で読み返すつもりでいる」

そう言って、彼は笑った。
その笑顔は、破産前にも、破産直後にもなかった種類のものだった。

再起を実感した瞬間|勝った日にノーエントリーしたこと

ある日、彼から届いたLINEにこう書かれていた。

「今日、条件はまあまあ揃ってた。でも、ローソク足の形が少しだけ弱かったから入らなかった」
「そのあと、思ったより伸びた。でも後悔はない」

このやりとりを見たとき、僕は心の中でうなずいた。
ようやく、彼の中で結果よりもプロセスが価値になっていた。

その日は、勝っていない。
でも、勝てた自分がそこにいた。

だからこそ、もう破産前の彼ではないと思えた。

今、この記事を読んでいるあなたへ|これは他人事じゃない

彼の話を「特殊な例」だと思うかもしれない。
だが、実際に彼が辿った失敗と心理は、すべてのトレーダーが通る道のすぐそばにある。

・ナンピンを繰り返す
・時間帯も根拠も無視して飛びつく
・ルールを破って勝ったことを成功と勘違いする
・勝ちたい感情が先に出る
・生活が荒れる
・感情が取引を支配する

どれか一つでも思い当たるなら、いつ自分が同じ道を辿ってもおかしくない。

大事なのは、「再起できるかどうか」ではない。
そもそも、再起できる構造をつくっておくことだ。

A light-skinned male FX trader in his early 30s looking calm and reflective
Stability begins with awareness. A man shaped by loss, now grounded

STEPで学ぶ、破綻と再起の間にあるもの

ここで、彼のような道を辿らずに済むために、
あるいは既に踏み外しかけた人が立て直すために、読んでほしい実践記事を3つ厳選して紹介する。

STEP
負け癖を理解する(FXで負け続ける人に共通する構造)

ルールを破る。感情で動く。リスクを無視する。

破産する人間に共通する根本的なクセを、徹底的に言語化している。

STEP
トレードに必要なのは相場観ではない(再現性のある環境をつくる)

勝率や手法ではなく、構造に注目することが鍵。

勝ち組が見ているのは、ローソク足ではなく歪みと環境認識だ。

STEP
冷静さを維持する戦略的な仕組み(通貨の強弱と手を出さない勇気)

勝つタイミングだけでなく、手を出さない場面の見極めが鍵。

強弱の明確化こそ、トレードルールを守る基盤となる。

この3つの記事は、彼の再起プロセスの裏側に常にあった「設計図」のようなものだ。

すぐに変われなくてもいい。
大切なのは、変わる前に理解しているかどうか。

最後に|破綻は終わりではない、始まりにもなる

破綻は、確かにすべてを失う。
だが、何も残らないわけじゃない。
その中から、自分の「構造」を見直し、もう一度積み直せる人間だけが、再びチャートの前に立てる。

彼は破産した。自己破産もした。
友人も信用も、お金も全てを一度失った。
けれど今、彼は自分の意思で、静かに勝ち続けている。

それは、華やかでも派手でもない。
だが、誰よりも確かなトレーダーになっていた。

あなたが今、どの段階にいても関係ない。
この記事が、あなたの戻ってくる場所になれば嬉しい。

ケンタ

A dark-toned image symbolizing the collapse and recovery of a forex trader.

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この記事を書いた人

中学時代から株のチャートを眺めて株価を予想し、大学生(18歳)になって直ぐに証券口座を開いて株式投資とFXを始める。新卒で東京の中小企業に就職するも、企業の将来性に不安を感じて僅か5か月で退職し、複数回の転職も経験。自宅で株取引とFX取引をして成功と失敗を繰り返しながら投資の実力を培う。現在は、主にFXで毎年安定してサラリーマンの平均年収の約3倍程度の投資収益を出している。複数の海外FX口座を利用中。FXで大きな儲けを獲得し、現在は不動産投資にも挑戦中!

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