8月に入り、相場は夏らしさを色濃く帯びてきた。
出来高は徐々に細り、流動性の低さが値動きに微妙なクセをもたらしている。
このタイミングでは、派手な動きよりも“次にどう動くか”を探る静かな観察力が問われる。
この記事では、2025年8月2日現在のチャートと地合いをもとに、1週間前後を想定したドル円の注目ポイントと今後に備えるための着眼点を示していく。
単なるレート予想ではなく、マーケット参加者の心理、季節要因、イベントリスクなどを含めた総合的な視点から「今なにを見るべきか」「どこに準備の余地があるか」を明確にしていく。
今すぐエントリーすべき場面かどうかではなく、どういった展開になれば仕掛けられるのか。その判断軸を読者に提供する。
ドル円(USDJPY)|崩れの予兆は勢いの鈍化とマルチ通貨圧力
現在のドル円は147円前半で推移している。
7月31日には一時150.917円の高値を記録し、その後急落。現在は147.36円付近での攻防が続いている。
150円を超えた局面は一見トレンド継続のようにも見えたが、実際には勢いの鈍化と投機筋の一斉撤退を示唆する構造だった。
テクニカル観点からの局面解釈
7月31日の大陰線は約3円の急落幅を伴っており、チャートパターンとしても「バーチカルトップ」の形に近い。短期間で急騰したあとの一本下げは、トレンドの終焉や転換点でしばしば現れる。
特に今回の下げは、出来高が伴っていた点も含め、単なる押し目とは言い切れない。
現在の重要サポートは147.00〜147.20。ここを割り込むと、6月安値の145円台、さらにその下の144.30付近までの下落余地が開けてくる。戻りの目処は148.50〜149.30。
このゾーンには高値圏で掴まされた買い玉の戻り売りが大量に控えており、短期の上昇は限定的となりやすい。
トレーダー心理の読み解き
高値掴みした買い勢力は「一瞬でも戻れば売りたい」との未練を残しており、戻り局面では売り圧力が顕在化しやすい。
一方で、7月末の急落で売り仕掛けに成功したショート勢は、短期的な利益確定を急ぐ傾向にあり、押し目の買戻しが断続的に入ってくる構造だ。
つまり、今のドル円相場は「戻れば売られ、下がれば買われる」という往復ビンタの膠着フェーズ。明確なトレンド形成というよりは、心理の綱引きが主戦場となっている。
ユーロドル(EURUSD)|高値圏からの脱落と持ち合い回帰
ユーロドルは7月1日に1.08296の高値を付けたあと、7月25日に1.13914まで約440pipsの下落を記録。
その後は1.15台前半までの戻りを見せたが、ファンダメンタルズ主導の買いではなく、単なるショートカバーの域を出ない。
構造的なドル買いと季節性要因
この動きの背景には、ユーロ圏景気減速懸念と、米経済指標の底堅さによる構造的なドル買いがある。
加えて、8月は例年「欧州通貨が弱くなりやすい季節性」が意識される時期。欧州圏では夏季休暇入りに伴い、銀行ディーラーのフローが細る一方、米国では雇用統計をはじめとした大型指標が控え、ドルへの資金集中が進みやすい構造がある。
ユーロドルにとっての天井は既に形成された可能性が高く、上昇余地は限定的。一方で下落に関しては、直近安値を再度試す局面が視野に入る。
- 戻り売り水準:1.1580〜1.1620
- 下値ターゲット:1.1400、1.1350、最終的には1.1280〜1.1300ゾーン
ユーロ円(EURJPY)|173円台は過熱領域、すでに調整モードへ
ユーロ円は7月28日に173.893の高値を記録。これは2022年以降の上昇トレンドの最終局面とも見なされる水準であり、実際にそこからわずか数営業日で170円割れ目前まで急落している。
日足にみる過熱と反動
テクニカル的には「過去最高値更新→即反落」のパターンは、典型的なフェイクブレイクアウト(ダマシ)となる可能性が高い。
RSIやMACDといったオシレーター系指標でもダイバージェンスが発生しており、上昇の持続性はすでに失われていた。
ここに来て円買いが進行しやすい地合いが整いつつある中で、ユーロ円はユーロ売り×円買いというダブルの下押し圧力を受けている。
クロス円全体に共通する特徴だが、ユーロ円は特にボラティリティが高いため、値幅が大きくなりやすい点に注意。
- 戻り売りゾーン:171.80〜172.50
- サポート:169.20、168.00、167.20
特に169円を明確に割り込んだ場合は、8月中旬にかけて167円台までの一段安も視野に入る。
ユーロ主導のドル売りと円買いの挟み撃ち
ドル円を語るうえで、ユーロドルとユーロ円の動向は無視できない。前述の通り、ユーロドルは7月1日に高値を付けたのち下落し、ユーロ円も同様に7月28日の高値から大幅下落。
これは「ドル買い」と「円買い」が同時進行していることを意味する。
つまりドル円は、ユーロドルによるドル売り圧力の一巡と、ユーロ円による円買い圧力の継続という、方向の異なるバイアスの中にある。こうしたねじれ構造の中でドル円がどちらに抜けるかは、ユーロの次のトレンド次第という面もある。
特に注目すべきは、「ユーロ円の下落が止まらない限り、ドル円の反発は上値の重いものにとどまる」という点だ。
8月相場は静かな急落の温床
プロトレーダーが警戒するのは、単なる夏枯れではない。
過去の8月相場を振り返ると、表面上はボラティリティが低いように見えても、実際は薄商いを突いた急変動が突如発生する構造にある。特にドル円では、7月末〜8月上旬の高値から、8月下旬にかけて徐々に崩れていく「静かな下げ」が多く観察されている。
その背景には以下のようなファンダメンタルズがある。
- 日本の機関投資家による為替ヘッジポジションの巻き戻し(期初リバランス)
- 海外ファンドの決算期前(8月末・9月)に向けた玉調整
- 日銀政策の曖昧化により、円ショートが持ちづらい地合い
- 欧米勢の夏季休暇により板が薄くなり、少額のオーダーでもレートが飛びやすい
特に最後の要因は見落とされがちだが、アルゴリズムによるストップ狩りが日中でも発動しやすく、流動性の乏しい時間帯の上下動がリスクとなる。
8月のドル円は「イベントがなくても動く」特殊な時期だと認識しておく必要がある。
8月上旬のドル円シナリオ(USDJPY)
ここからのドル円トレード戦略は、シナリオを3本に分けて考える。
シナリオA:148.50〜149.00ゾーンへの戻り売り
急落前の売り玉と、戻り待ちの買い玉が交錯する価格帯。ここは非常に売りが出やすいゾーンであり、基本スタンスは「戻れば売る」。短期勢のロスカットを巻き込んだ一瞬の上昇があっても、すぐに崩れる構造が見えている。
- 利確:146.00〜145.30
- 損切り:149.40超え
シナリオB:147円を明確に割り込んだ場合の下方加速
テクニカル的には「147.00の死守」が現在の焦点。ここを割ると、上昇トレンド終了の確証が得られ、テクニカル派・アルゴ勢・裁量派すべてが売りに回るタイミングとなる。
- エントリー:146.80以下
- 利確:145.00〜144.30
- 損切り:147.20超え
シナリオC:147円台での短期リバウンド狙い
「割れないなら買う」という逆張りの基本。ここでは日足ベースでのヒゲ残しや、5分〜1時間足でのダブルボトム形成など、下げ止まりの兆候を確認してからの打診買いが有効。
- エントリー:147.20〜147.40
- 利確:148.80〜149.30
- 損切り:146.80割れ
【STEPで学ぶ】8月の相場を読む前に押さえておきたいFX戦略記事
本稿を読んでいるあなたは、すでに一定の経験を積んでいるはずだ。
だが、勝率を安定させ、長期的に資産を築くには、単なるチャート分析以上の視点が求められる。
ここでは、トレードの「深掘り」に進むための厳選記事を、レベルアップ方式で紹介する。それぞれのSTEPで習得できる知識と視野を確認し、段階的に実力を底上げしていこう。
まずはメンタルとリスクの話から。
なぜ人は破産するのか、どこで判断を誤るのか。
このステップでは、過去の失敗事例を通じて感情と資金管理の重要性を直視する。
損失を最小限にとどめるための思考回路を、ここで見直してほしい。
次に学ぶのは、人間心理が相場でどう働くかという視点。
損切りできない、利益確定が早すぎる
その背景には「自分の心のクセ」がある。
ここでは、認知的不協和という心理メカニズムから自分自身の行動パターンを見直し、冷静な判断を磨いていく。
個人には見えにくいが、為替相場の裏には巨大資金の動きがある。
どのタイミングで、どのような条件下で動きやすいのか。
この視点を持てば、トレードの読みは一段深くなる。
【まとめ】8月相場の「間」に仕込む、静かなる勝者の思考
2025年8月2日時点の相場環境をもとに、今後の中短期的な戦略を考察してきた。この記事が狙うのは「今日のエントリー」ではない。明日以降、勝負を仕掛ける準備を整えるためのトリガーを発見することにある。
各通貨ペアとも、いずれも大局観としては要所に差し掛かっているが、無理に突っ込むタイミングではない。
これらを同時に考える複眼的な視点こそが、夏季の不安定な相場で生き残るための条件となる。
焦らず、鈍らず、読み違えず。8月後半の動き出しに最短で対応できるよう、今のうちに仕込みと整備を済ませておきたい。