今回は、長期投資にあまり向かないであろう銘柄を紹介する。
アルフレッサ(2784)は、指標を見る限り「低ROE」であり、経営資源の効率的活用による利益創出が上手くできていない。
その経営状態は、長い目で見ると業績の持続的成長性に「トレンド」として表れ、やがて株価にも反映される。
アルフレッサ(2784)の月足チャートについても詳しくは後述するが、ボラティリティが高くトレンドも安定しない。
そのため、こちらの銘柄を「短期目線」で買うことはできても、数年単位の「長期目線」での現物株投資には、不向きだといえる。
超長期目線では、大雑把に見れば上昇トレンドだと言えなくもないですが・・・。
アルフレッサは、月足のボラティリティがあまりにも大きすぎ。
買った時期によっては、大きな含み損になって、長期保有中にストレスが溜まりそうですね。
2784 アルフレッサ – 銘柄概要と分析指標
証券コード | 2784 |
銘柄名 | アルフレッサ |
決算 | 3月 |
設立 | 2003年9月 |
上場 | 2003年9月 |
業種名 | 卸売業 |
本社 | 東京都千代田区 |
従業員 | 連11,772名<23.3> |
ROE | 5.4% 予4.5% |
PER | 17.18倍 |
PBR | 0.91倍 |
配当利回り | 2.93% |
銘柄の特色
医薬品卸で国内首位。M&Aで規模拡大を進め、全国展開を目指す。医薬品等製造も展開。
国内首位の企業規模は、長期投資をする上で安心感がある。
大きな企業だからこそ、より一層多くのステークホルダーの厳しい監視の目が光り、間違ったことはできないのが一般的。
そのため、不祥事が生じるリスクも、小規模企業に比べたら抑えられるだろう。
それに、「規模の経済性」により、合理的かつ効率的な経営がし易いというメリットもある。
もっとも、それらは全て分析指標や業績に反映されるため、早速だが、分析指標を見ていこう。
分析指標の概要
ROE(自己資本利益率) – 5.4%
日本の上場企業のROEは、およそ9.5%が平均だといわれている中で、アルフレッサ(2784)の場合はその半分しかない。
医薬品卸で国内首位という規模の経済性(=優位性)があるのに、経営資源を効率的に活用できていないという点は、ネガティブな視点で注目せざるを得ない。
PER(株価収益率) – 17.18倍
PER20倍程度が、相場の加熱感を測る上での「中立」の目安だと昔からいわれている。
17.18倍ということは、割安でも割高でもない。
PBR(株価純資産倍率) – 0.91倍
PBRも「中立」程度の数値であって、加熱感はない。
配当利回り – 2.6%
アルフレッサ(2784)が上場する東証プライム市場において、配当利回りの平均は、約1.6%といわれている。
東証プライムの平均水準との相対評価では、まずまずの配当だといえる。
だが、「長期投資の対象」として見ると、若干心細く感じられるのではないだろうか。
そして、アルフレッサの月足のボラティリティは、かなり高めだ。
投資家が、株式を長期間保有する間に耐えなければならない「ボラティリティの高さ」を考慮すると、長期投資において「保険的な役割」を果たすべき配当金の水準として、とてもではないが、投資家が満足できるとは言いがたいだろう。
値動きの確認
月足
こちらが、アルフレッサ(2784)の月足だ。
画面の左端から右端の位置関係を見ると、上昇トレンドだといえる。
しかし、ボラティリティが大きすぎるため、エントリーした位置によっては、大きな含み損を抱える期間の長い「塩漬け状態」に陥るリスクがある。
ところで、チャートに表れる値動きの結果だけ見れば、大底でエントリーするのも難しくないように錯覚しがちだ。
しかし、値動きの先を見通すのは、投資のプロフェッショナルであっても容易にできることでない。
運要素を除き、実力で「大底」で買うことなどは、極めて困難だ。
そのため、アルフレッサ(2784)の月足の値動きを見る限り、この銘柄は、数年単位の長期保有には不向きだと評価する。
こんなに大きな値幅を取って上下動されたら、大きな含み損を抱えるリスクがあるのは、目に見えています・・・。
恐らく、この銘柄で多くの長期投資家が散っていったことでしょう。
このような銘柄は、長期投資をするなら絶対に避けたいところだな。
サステナビリティ・チェック
当サイトの注目ポイント
当サイトでは、長期投資向けの銘柄を選ぶにあたり、「傾向・トレンド」とその持続性・持続期間等に着目している。
持続性があって、トレンドが鮮明になっている銘柄ならば、将来を予測しやすい。
その一方で、一過性の「特需」で業績が好転し、短期的に増配するような景気敏感株等は、浮き沈みが激しく将来予測も立てづらいし、なにより長期安定収入に寄与しないことも多い。
そのような特需・一過性の好業績銘柄は、長期投資向けとはいえない。
投資のプロフェッショナルは、投資で「稼ぎ続けるのが仕事」です。
そう。だから、投資判断においても、「再現性」や「持続可能性」といった要素が大事なんだよな。
サステナビリティとは何か?
サステナビリティ(sustainability)は、「持続可能性」と訳される。
「環境問題を議論する場面で出てくることがことが多い」という印象があるのではないだろか。
だが、この言葉は、環境問題の専門用語などではなく、広い意味で次のような解釈が為されている。
サステナビリティとは、将来に渡って、現在の社会機能等が持続していくことができる仕組みやプロセスのこと。
ところで、当サイトでは、効率的かつ合理的な経営資源の活用を評価する際に用いられる「ROE」という指標を注視している。
というのも、長期投資をする上では、投資先企業の将来性・好業績の持続可能性が、重要なファクターになってくるのだが、株式投資でよく用いられる「ROE」は、それらの目安を示してくれるからだ。
アルフレッサ(2784)のサステナビリティ
「サステナビリティ」を、本稿のテーマであるアルフレッサ(2784)に当てはめてみよう。
現在、アルフレッサが、医薬品卸業界内で持つ優位性(=株価の上昇要因)や、剰余金の配当等は、引き続き、持続していくのか、持続していかないのか。
こう書くと、小難しく感じられるかもしれない。
ただ、当サイトでは、一般の個人投資家の皆さんが、誰でもご理解いただけるよう、各分析項目について簡潔に書かせていただくつもりだ。
各項目の評価は、5段階評価(S~E)とさせていただく。
テーマ性
評価:C
2023年6月現在の医薬品卸業界やアルフレッサ(2784)に、他の業界・企業と比べて相対的に注目すべきテーマ性は無い。
コロナ禍明けということもあり、「医薬品業界」という括りより、個別銘柄の業績・将来性等に着目して物色されやすい相場環境だ。
企業規模
評価:A
医薬品卸で国内首位という、業界内で放つ存在感の高さと優位性は高く評価したい。
業績推移
評価:B
アルフレッサ(2784)の近年の業績は、赤字転落も無く、年度毎の数値だけを見ると申し分ない。
しかし、先述の通り、ROEが僅か5.4%に留まっており、将来性や持続可能性を推し量る上で気がかりだ。
実際に、アルフレッサ(2784)の業績に「成長性」があるかというと、現状維持のトントンで精一杯という状態になっている。
そのような点も勘案して、「B評価」とさせていただく。
配当金の傾向
評価:C
配当金は、概ね増配傾向だ。
しかし、長期投資の銘柄としては、株価に対して配当金の水準が高いとはいえない(=配当利回りが低い)ことや、月足ベースでのボラティリティが大きすぎるため、長期投資において欠かせない「配当の保険的役割」を担いきれないことを加味すると、「C評価」が相当だろう。
なお、アルフレッサ(2784)は、2014年に株式を4分割している。
株価トレンド・値動きの評価(月足)
評価:C
月足の株価トレンドについては、先述した通り、長期投資向けではない。
アルフレッサ(2784)は、ボラティリティが大きすぎる。
そのため、「株の将来の値動きを完璧に読める」という超人にとっては格好の餌食になるのだが・・・そのような超人は、滅多におらず、ここで「稀にみる超人向けの評価」を付けても仕方がない。
長期投資をする一般個人投資家にとっては、「C評価」が相当だろう。
まとめ
総合評価:C
- アルフレッサ(2784)は、長期投資に向いているとはいえない。
- 企業規模は申し分ないのだが、ROEが低く、効率的な経営資源の活用に疑義が生じる。
- 年度毎の業績だけを見ると決して悪くないのだが、その持続可能性や成長性には、一抹の不安が残る。
- 長期投資対象としては、ボラティリティが大きすぎる。
- 配当利回りは、ボラティリティとのバランスが大事。アルフレッサ(2784)は、そのバランスが悪い。
単に規模がデカいだけの組織やチームのことを、「頭の悪い鯨」とか、「使えないゴリラ」だと揶揄したりしますよね。
そんな表現あったっけ・・・?