今回は、長期投資銘柄として「ギリギリ合格点」だといえる銘柄を紹介する。
結論からいうと、日本製鉄(5401)は、5段階評価(S~E)でC評価だ。
C評価は、合否ライン上にある銘柄であって、同じC評価でも「ギリギリ不合格」となるケースもある。
ところで、日本製鉄(5401)は、国内首位の粗鋼生産力を誇る銘柄だ。
直近数年だけを見ると、株価は上昇トレンドではあるものの、数十年に時間軸を延ばすと、大きな山が二つある。
もちろん、その中で下落トレンドの時期も相当長い。
長期間の間に「大きな山」を何度も作るような銘柄は、長期投資では、好ましくないので気がかりだ。
確かに「大きな山」が2つもありますね。
こういった銘柄は、何度も山を作っては落ちていく傾向があるからな・・・。保有中に大きな含み損になるリスクがあり、ストレスが溜まるんだよな。
5401 日本製鉄 – 銘柄概要と分析指標
証券コード | 5401 |
銘柄名 | 日本製鉄 |
決算 | 3月 |
設立 | 1950年4月 |
上場 | 1950年10月 |
業種名 | 鉄鋼 |
本社 | 東京都千代田区 |
従業員 | 連106,068名<23.3> |
ROE | 18.1% 予9.1% |
PER | 7.2倍 |
PBR | 0.7倍 |
配当利回り | 4.7% |
銘柄の特色
粗鋼生産量で国内首位、世界4位。技術力に定評があり、高級鋼板に強い。
日本製鉄(5401)は、業界内で圧倒的なプレゼンスを誇る。
「国内首位」というのは、投資家にとって安心材料の一つとなる。
というのも、多くの監視の目に晒される分だけ、不祥事が起こるリスクが比較的低いと考えられるからだ。
さらに、規模の経済性を活かした経営がし易く、業界をリードする「高い成長性」にも期待が持てる。
分析指標の概要
ROE(自己資本利益率) – 18.1%
日本の上場企業のROEは、およそ9.5%が平均だ。
日本製鉄(5401)のROEは、その2倍程度であるため、効率的な経営資源の活用が行われているといえる。
しかし、会社四季報編集部の独自予想に基づき、四季報には、「(予)9.1%」との記載も見られる。
当サイトは、あくまでも実績ベースで評価するが、四季報編集部の予想通りに、今後、日本製鉄(5401)のROEが半減するようなことがあれば、この銘柄の魅力が低減し、もはや「長期投資向け」とは言えなくなってしまう。
PER(株価収益率) – 7.2倍
相場の加熱感を測る上での「中立」の目安は、PER20倍程度だ。
PER7.2倍ということは、加熱感はなく割安水準なのだが・・・割安で放置されていたということは、テーマ性がないなど、市場で脚光を浴びる理由が無いことが多い。
したがって、指標が「割安」だからといって、それだけを理由に買いに走るのは止めておこう。
PBR(株価純資産倍率) – 0.7倍
PBRも、割安であることを示唆している。
配当利回り – 4.7%
日本製鉄(5401)が上場する東証プライムでは、配当利回りの平均が1.6%程度となっている。
その中で、4.7%という配当利回りは、長期投資かにとって非常に魅力的に映る。
月足の値動きの確認
こちらが、日本製鉄(5401)の月足だ。
「非常に大きな山」を二回作っており、このようなチャートは、保有期間中に大きな含み損を抱えるリスクがあるため、あまり長期投資向けではない。
もっとも、日本株には、このような形状のチャートは多々見られるのだが・・・。
山を作りながらも「上昇トレンド」を描いている銘柄もあるため、敢えてこのような形状のチャートの銘柄を選ぶ必要はないだろう。
したがって、「チャートだけ」を見れば、日本製鉄(5401)は、長期投資銘柄として不合格だ。
サステナビリティ・チェック
当サイトの注目ポイント
当サイトでは、長期投資向けの銘柄を選ぶにあたり、「傾向・トレンド」とその持続性・持続期間等に着目している。
持続性があり、トレンドが鮮明になっている銘柄ならば、将来を予測しやすい。
例えば、米国株は、一貫して成長し続け、株価も上昇トレンドを描いている銘柄が多く見られる。
その一方で、日本株は、月足ベースで大きなレンジを描いている銘柄も珍しくない。
一過性の好業績や業績悪化で、月足ベースのトレンドが大きなレンジを描くと、長期間の含み損を抱えることも少なくない。
そうすると、長期的な投資収益に寄与しない可能性も否定できないばかりか、大きな精神的ストレスを受け続けることになる。
投資で豊かな人生を実現するはずが・・・投資行為が藪蛇になり、苦痛を味わうのは避けたいところだ。
サステナビリティとは?
サステナビリティ(sustainability)は、日本語で「持続可能性」という。
広い意味で解釈すると、次の通りだ。
サステナビリティとは、将来に渡って、現在の社会機能等が持続していくことができる仕組みやプロセスのこと。
ところで、当サイトでは、効率的な経営資源の活用を評価する際に用いられる「ROE」という指標を注視している。
というのも、長期投資では、投資先企業の将来性・好業績の持続可能性が、重要なファクターになってくるからだ。
日本製鉄(5401)のサステナビリティ
「サステナビリティ」を、本稿のテーマである日本製鉄(5401)に当てはめてみよう。
日本製鉄が、鉄鋼業界内で持つ優位性(=株価の上昇要因)や、剰余金の高い配当水準等(=株価の上昇要因)は、引き続き、持続していくのか、持続していかないのか。
このように書くと、小難しく感じられる。
ただ、当サイトでは、各分析項目について誰でもご理解いただけるよう、なるべく簡潔に説明していこうと思う。
なお、ここでは「長期投資を前提とした評価」を行っており、短期投資家にとっては、参考にならないので予めご了承いただきたい。
各項目の評価は、5段階評価(S~E)とさせていただく。
テーマ性
評価:C
日本製鉄(5401)には、際だって物色されるべきテーマ性があるとはいえない。
企業規模
評価:A
「粗鋼生産量で国内首位、世界4位」という実績は、特筆に値する。
もっとも、当サイトの企業規模の評価基準では、「世界首位級」か、それに近い規模の優位性がある場合にのみ、この項目をS評価としてる。
そのため、日本製鉄(5401)の企業規模は、A評価とさせていただく。
業績推移
評価:C
売上高は申し分ないのだが、どうしても、利益が安定しない傾向があるようだ。
株価は、利益に対して敏感に反応するため、赤字転落となると、ともすれば、投資家が大きな含み損を抱える羽目になる。
それらを総合的に加味して、C評価とさせていただく。
配当金の傾向
評価:C
業績が不安定だと、どうしても配当金も不安定になってしまう。
とはいえ、赤字でも無配転落とはならず、なんとか踏ん張って「10円の配当」を実施している。
それに、業績が回復した2022年、23年には、大幅な増配を実施。株主に対して一定の配慮を見せている。
そのことを評価して、D評価に近い・・・C評価とさせていただく。
株価トレンド・値動きの評価(月足)
評価:C
日本製鉄(5401)の月足チャートが、長期投資には向かないのは、先述の通りだ。
しかも、月足ベースだと、ボラティリティがあまりにも高すぎる。
もっとも、長期下落トレンドではない点は、一応評価する必要があるだろう。
そのため、長期投資を前提とした月足チャートの評価は「Dに近いC評価」とさせていただく。
まとめ
総合評価:C
- 日本製鉄(5401)は、決して長期投資に向いているとはいえない。
- 月足チャートは、超長期で見ると上昇トレンドでも下落トレンドでもない。
- 高ROEや業績回復時の配当金の高さを評価して「長期投資銘柄としてギリギリ合格点」だ。
- 特に直近の配当利回りは、「4.7%」という高水準だ。
- ただ、高配当の持続可能性には疑義が生じる。