ここ数年で株式投資の利益が安定して出るようになった人は多い。
相場環境に恵まれたこともあるし、個人投資家のレベルが確実に上がっている実感もある。
ただ、利益が出始めた瞬間から、避けて通れないテーマが一気に現実味を帯びてくる。
税金だ。
含み益が実現益に変わった途端、そこから一定割合が静かに差し引かれる。
思ったより手元に残らないと感じたことがある人は多いはずだ。
勝っている感覚の割に、資産の増え方が鈍い。
確定申告の時期が近づくと、なんとなく気持ちが重くなる。
では、株式投資で得た利益は、どこまで節税できそうなのか。
この問いに対して、はっきりさせておきたいことがある。
できることは、確かにある。
一方で、できそうに見えて実際には認められていないことも、はっきり存在する。
この境界線を正しく理解しているかどうかで、投資家としての手残りは長期的に大きな差になる。
しかも、間違った理解のまま動くと、節税どころかリスクを抱え込むことにもなりかねない。
僕自身、学生時代から株式投資を続け、証券会社でプロとして相場に関わり、現在は専業として毎年このテーマと向き合っている。
節税を意識しすぎて遠回りをした年もあれば、制度を正しく理解していたことで余計な税負担を避けられた年もある。
その経験から言えるのは、株式投資の節税は知識量よりも理解の正確さが重要だということだ。
ネットに出回る派手な節税話の多くは、前提条件が抜け落ちている。
本稿では、国が認めた制度をしっかりと理解して、読者が使いこなせるように解説する。
株式投資で、年間で数十万円以上の利益が出てきた個人投資家なら、メリットが感じられるはず。
税金を過度に怖がる必要はない。
だが、何も知らずに放置していいテーマでもない。
読み終えたとき、自分の投資スタイルなら何を検討し、何を無理に触らなくていいのか。
その判断軸が自然と手元に残るような内容にしている。
株式投資の利益にかかる税金の基本構造
株式投資で節税を考えるなら、最初に避けて通れないのが税金の仕組みだ。
ここを曖昧なままにした節税話は、ほぼ例外なく危うい。
なぜなら、株式投資の税金は感覚論ではなく、国税庁が定めたルールで機械的に計算されるからだ。
まずは、この前提を正確に押さえる必要がある。
株式投資の利益は申告分離課税で処理される
上場株式を売却して得た利益は、申告分離課税の対象になる。
これは、給与所得や事業所得とは切り離して税額を計算する方式だ。
国税庁の定義では、上場株式等の譲渡による所得は、原則として申告分離課税とされている。
税率は一律で、次の合計になる。
所得税 15.315%
住民税 5%
合計 20.315%
ここで重要なのは、利益額によって税率が変わらない点だ。
10万円の利益でも、1,000万円の利益でも、税率は同じだ。
税金の計算式は意外とシンプルだ
株式投資の税額計算は、構造自体は難しくない。
基本となる計算式は次のとおりだ。
譲渡益 = 売却金額 -(取得金額 + 売買手数料)
この譲渡益に、20.315%を掛けた金額が税金になる。
例えば、次のようなケースを考えてみよう。
ある株を100万円で購入した。
売却価格は130万円だった。
売買手数料は3万円だった。
この場合の譲渡益は、130万円 -(100万円 + 3万円)= 27万円になる。
税金は、27万円 × 20.315% = 約54,850円だ。
この金額が、原則として自動的に課税対象になる。
ここには感情も裁量も入り込む余地はない。
特定口座と一般口座で何が変わるのか
税金の話になると、必ず出てくるのが口座区分だ。
国税庁が認めている口座は、大きく分けて特定口座と一般口座の2つになる。
さらに特定口座には、源泉徴収ありと源泉徴収なしがある。
特定口座(源泉徴収あり)を選んでいる場合、先ほどの計算で出た税金は売却時点で証券会社が自動的に差し引く。
つまり、納税はその場で完結する。
原則として確定申告は不要だ。
一方、一般口座の場合は事情が違う。
譲渡益の計算から税額の算出まで、すべて自分で行い、確定申告をする必要がある。
ここで重要なのは、節税の余地が生まれるのは、ほぼ例外なく確定申告をするケースだという点だ。
特定口座(源泉徴収あり)は楽だ。
だが、楽な分だけ、使えない節税手段も存在する。
この時点で理解しておくべき現実
ここまでの話で、まず押さえておいてほしい現実がある。
株式投資の税金は、税率をごまかすことも、計算方法をねじ曲げることも、合法的にはできない。
できるのは、どの利益を、どの損失と、どのタイミングで、どう相殺するかを選ぶことだけだ。
次のセクションでは、その選び方によって税金がどれだけ変わるのか。
具体的に、損益通算と繰越控除を使った節税の実務を掘り下げていく。
損益通算と繰越控除が節税の中心になる理由
株式投資で現実的に使える節税策は限られている。
その中で、ほぼすべての個人投資家に関係してくるのが、損益通算と繰越控除だ。
派手さはない。
だが、この2つを正しく理解しているかどうかで、数年単位の手残りは確実に変わる。
重要なのは、制度の存在を知っていることではない。
自分の取引にどう当てはめるかを、具体的な数字で理解しているかどうかだ。
損益通算とは何ができる制度なのか
損益通算とは、同じ年の中で発生した利益と損失を相殺できる仕組みだ。
国税庁では、上場株式等の譲渡所得について、同じ区分内での損益通算を認めている。
ここでいう同じ区分とは、上場株式等の譲渡益と譲渡損失だ。
給与所得や事業所得とは通算できない。
具体例で見てみよう。
A株で30万円の利益が出た。
B株で12万円の損失が出た。
この場合、課税対象となる譲渡益は次のように計算される。
30万円 - 12万円 = 18万円
この18万円に対して、20.315%が課税される。
税額は約36,567円になる。
もし損益通算をしなかった場合、30万円すべてが課税対象になり、税額は約60,945円になる。
この差は約24,000円だ。
損益通算は、損を帳消しにする制度ではない。
税金の計算対象を圧縮する制度だ。
損益通算が使える範囲と使えない範囲
ここで必ず押さえておきたい制限がある。
上場株式等の損失は、上場株式等の利益としか通算できない。
FXの利益や仮想通貨の利益とは相殺できない。
不動産所得や給与所得とも通算できない。
この制限を理解していないと、節税計画は簡単に破綻する。
また、非上場株式の損失は、上場株式等の利益とは原則として通算できない。
国税庁も、株式の区分ごとに取り扱いが異なることを明示している。
つまり、損益通算は万能ではない。
だが、株式投資の中では、最も確実で、最も基本的な節税手段だ。
繰越控除は未来の利益を守る制度だ
損益通算は、同じ年の中でしか使えない。
では、損失が出た年に利益がなかった場合はどうなるのか。
そこで登場するのが、繰越控除だ。
繰越控除とは、その年に出た損失を、翌年以降3年間にわたって繰り越せる制度だ。
国税庁では、上場株式等の譲渡損失について、一定の要件を満たせば繰越控除を認めている。
重要なのは、確定申告が前提条件になる点だ。
申告をしなければ、損失はなかったものとして扱われる。
具体例で見てみよう。
2025年に25万円の損失が出た。
この年に確定申告をした。
2026年に40万円の利益が出た。
この場合、課税対象となる譲渡益は、
40万円 - 25万円 = 15万円
税額は、15万円 × 20.315% = 約30,472円になる。
もし繰越控除を使わなかった場合、40万円すべてが課税対象になり、税額は約81,260円だ。
差額は5万円を超える。
繰越控除は、負けた年を無駄にしない制度だ。
相場では、毎年勝ち続けることは現実的ではない。
だからこそ、この制度の有無は長期では効いてくる。
繰越控除で見落とされがちな注意点
繰越控除には、いくつかの落とし穴がある。
まず、繰り越せる期間は最大3年だ。
永久に使えるわけではない。
次に、毎年連続して確定申告をする必要がある。
途中の年で申告をしなければ、その時点で権利は失われる。
また、特定口座(源泉徴収あり)を使っている人ほど、申告を忘れやすい。
源泉徴収されていると、税務が完結している感覚になるからだ。
だが、繰越控除を使うなら、源泉徴収ありでも確定申告は必須になる。
僕が損益通算と繰越控除をどう使ってきたか
僕が損益通算や繰越控除を意識するようになったのは、投資を始めて数年が経った頃だ。
毎年のように売買を繰り返す中で、利益が出る年と出ない年がはっきり分かれるようになった。
特に相場が荒れた年は、年間を通して損失だけが残ることもあった。
当時は、負けた年はそれで終わりだと思っていたが、確定申告を通じて考え方が変わった。
例えば、ある年に株式投資で20万円の損失が出た。
その年は利益がなかったため、税金は発生しない。
だが、確定申告を行い、損失を繰越控除として申告したことで状況は変わる。
翌年に30万円の利益が出た場合、課税対象は30万円ではなく、10万円になる。
税額は、
10万円 × 20.315% = 約20,315円
もし繰越控除を使わなければ、
30万円 × 20.315% = 約60,945円
差は4万円以上になる。
この差は一度きりではない。
投資を続ける限り、損失が出る年は必ず訪れる。
そのたびに、制度を知っているかどうかで、数万円単位の差が積み重なっていく。
この経験から感じているのは、
節税とは特別なテクニックではなく、
負けた年を無駄にしないための仕組みだということだ。
勝つことだけに意識が向いていると、税金は後回しになる。
だが、長く相場に残るつもりなら、損失の扱いまで含めて投資だと考えたほうがいい。
配当所得と株式譲渡益をどう組み合わせるか
株式投資の節税を考えるとき、売却益だけに目が向きがちだ。
だが、配当を受け取っている投資家ほど、申告の選択次第で結果が変わる。
配当所得は、扱いを誤ると税金を払い過ぎる。
一方で、状況に合わない申告を選ぶと、逆に不利になることもある。
ここでは、国税庁が定めている配当所得の扱いを前提に、実務で判断すべきポイントを整理する。
配当所得の課税方法は3つある
上場株式の配当金には、次の3つの課税方法が用意されている。
総合課税
申告分離課税
申告不要制度
どれを選ぶかは投資家側の判断になる。
自動的に最適な方法が選ばれるわけではない。
証券会社の特定口座で配当を受け取っている場合、原則として20.315%が源泉徴収される。
この時点では、申告不要制度を選んでいる状態だ。
だが、確定申告をすることで、別の選択肢を取ることができる。
申告不要制度が向いているケース
最もシンプルなのが、申告不要制度だ。
配当金を受け取った時点で税金が引かれ、そこで完結する。
例えば、年間配当金が10万円の場合、
10万円 × 20.315% = 約20,315円
手取りは約79,685円になる。
給与所得が高く、他に控除の余地が少ない人にとっては、申告不要制度が無難な選択になることが多い。
手続きも不要で、税務上のミスが起きにくい。
ただし、株式投資で損失が出ている年には、この選択が不利になることがある。
配当と譲渡損失は損益通算できる
国税庁では、上場株式等の配当所得について、申告分離課税を選択した場合、譲渡損失との損益通算を認めている。
これは非常に重要なポイントだ。
例えば、
株式の売却で30万円の損失が出た。
同じ年に、配当金を15万円受け取った。
この配当を申告分離課税で申告すると、
15万円 - 30万円 = マイナス15万円
課税対象はゼロになる。
この場合、配当金に対する税金は実質的に発生しない。
さらに、使い切れなかった損失15万円は、繰越控除として翌年以降に回すことができる。
この仕組みを知らずに申告不要制度を選ぶと、
配当金に対して約3万円の税金をそのまま納めることになる。
配当控除は万能ではない
配当所得を総合課税で申告すると、配当控除を受けることができる。
これは、法人税と所得税の二重課税を調整する仕組みだ。
一見すると得に見えるが、注意点も多い。
総合課税を選ぶと、配当所得は給与所得などと合算される。
その結果、所得税率が上がる人もいる。
例えば、課税所得がすでに高い人が総合課税を選ぶと、
配当控除よりも税率上昇の影響が大きくなるケースがある。
また、住民税の扱いも複雑になる。
このため、配当控除は誰にとっても有利な制度ではない。
実務で意識すべき判断軸
配当を受け取っている投資家が考えるべきなのは、次の点だ。
その年に株式譲渡損失があるか。
繰越控除を使う予定があるか。
給与など他の所得水準はどの程度か。
これらを無視して、毎年同じ申告方法を選ぶのは危険だ。
配当の節税は、単体ではなく、年間損益全体の設計として考える必要がある。
次のセクションでは、特定口座(源泉徴収あり)を使いながら、あえて確定申告をする意味について掘り下げる。
手間と効果のバランスをどう考えるかを説明する。
特定口座でも確定申告を検討すべきケース
特定口座(源泉徴収あり)は、株式投資の税務を非常にシンプルにしてくれる。
売却益や配当金に対する税金は自動で差し引かれ、原則として確定申告は不要になる。
ただし、この仕組みは「常に最も税金が少なくなる」という意味ではない。
特定口座は、税金の再計算や調整をしないことと引き換えに、手続きを簡略化している制度だ。
だからこそ、数字で見たときに差が出る年が存在する。
特定口座のまま何もしない場合の税金
まず、特定口座(源泉徴収あり)で完結させた場合の基本形を確認する。
例として、次のケースを考える。
株式売却益 50万円
配当金 15万円
この場合、それぞれに20.315%が源泉徴収される。
売却益の税金
50万円 × 20.315% = 101,575円
配当金の税金
15万円 × 20.315% = 30,472円
合計税額は、
101,575円 + 30,472円 = 132,047円
特定口座で完結させると、この金額がそのまま確定する。
損失がある年に確定申告をするとどう変わるか
次に、同じ年に譲渡損失が出ていた場合を考える。
売却益 50万円
譲渡損失 40万円
配当金 15万円
特定口座のまま何もしなければ、先ほどと同じ計算になる。
だが、確定申告をすると、計算の順番が変わる。
まず、譲渡益と譲渡損失を通算する。
50万円 - 40万円 = 10万円
次に、配当金を申告分離課税で申告し、損益通算する。
10万円 + 15万円 = 25万円
これが課税対象額になる。
税金は、
25万円 × 20.315% = 50,787円
特定口座で完結させた場合の税額が132,047円だったことを考えると、
132,047円 - 50,787円 = 81,260円
8万円以上の差が生じる。
ここまで数字を追えば、確定申告をする意味は直感的に理解できるはずだ。
繰越控除が絡むと差はさらに広がる
さらに、前年からの繰越損失がある場合を考える。
前年からの繰越損失 30万円
当年の売却益 50万円
当年の配当金 15万円
まず、売却益と繰越損失を通算する。
50万円 - 30万円 = 20万円
次に、配当金を加える。
20万円 + 15万円 = 35万円
課税対象は35万円になる。
税金は、
35万円 × 20.315% = 71,102円
一方、申告をせず特定口座で完結させた場合は、
売却益の税金 101,575円
配当金の税金 30,472円
合計 132,047円
差額は、
132,047円 - 71,102円 = 60,945円
繰越控除は、一度の申告で終わらない節税効果を持っていることが、数字から見えてくる。
数字で見れば申告判断は明確になる
ここまでの計算から分かるのは、次の点だ。
損失がある年
配当を受け取っている年
繰越控除が残っている年
このいずれかに当てはまる場合、特定口座で完結させるか、確定申告をするかで、税額は数万円単位で変わる。
逆に、損失がなく、配当も少なく、繰越控除もない年は、無理に申告をしなくても実害は出にくい。
特定口座と確定申告は、思想ではなく計算で判断するものだ。
数字を一度書き出してみるだけで、答えはかなり明確になる。
株式投資の節税で誤解されやすいポイント
株式投資の節税は、制度を知っていれば誰でも一定までは最適化できる。
一方で、やらなくていいことや考えなくていいことに時間を使っている人も多い。
ここでは、実務として誤解が多い論点を整理する。
節税効果が薄いものやリスクの割に見返りが小さいものを切り分けていく。
税率そのものを下げようとする発想は現実的ではない
まず押さえておくべき前提がある。
上場株式等の譲渡益にかかる税率は、原則として20.315%で固定されている。
利益が増えれば税率が下がることもなく、一定額以下なら軽減される制度もない。
この構造を理解していないと、税率を下げる裏技を探し続けることになる。
例えば、譲渡益が20万円の場合
20万円 × 20.315% = 40,630円
譲渡益が200万円の場合
200万円 × 20.315% = 406,300円
金額は違っても、割合は常に同じだ。
現行制度の範囲では、税率を操作するという発想自体が的外れになる。
法人化すれば必ず得になるわけではない
一定規模以上の利益が出ると、法人化という選択肢が話題に上がる。
だが、株式投資の利益を法人で受けることは、必ずしも節税につながらない。
個人の場合は、
譲渡益 × 20.315%
法人の場合は、
・法人税等
・役員報酬に対する所得税と住民税
・社会保険料
これらが重なって発生する。
例えば、法人で100万円の利益が出たとする。
法人税等を30%と仮定すると、
100万円 × 30% = 30万円
残り70万円を役員報酬として受け取れば、そこにさらに税金がかかる。
最終的な手残りは、個人でそのまま受け取るより少なくなるケースも珍しくない。
法人化は節税手段ではなく、事業形態の選択だ。
節税だけを理由に検討するのは、リスクが大きい。
経費計上で税金を減らそうとするのは難しい
株式投資にかかった費用を経費にできないかという発想もよく見かける。
だが、個人投資家の場合、経費計上できる範囲は極めて限定的だ。
譲渡益の計算で差し引けるのは、取得費と売買手数料だけになる。
パソコン代や通信費、書籍代やセミナー代を直接差し引くことはできない。
例えば、
年間の譲渡益が100万円
関連費用が20万円
であっても、
100万円 - 20万円
という計算は認められない。
税務上の処理は、
100万円 × 20.315% = 203,150円
になる。
経費で調整しようとするより、損益通算や繰越控除を使うほうが現実的だ。
NISAは節税ではなく非課税という別枠だ
NISAは、株式投資の税金対策として非常に有効だ。
ただし、節税とは性質が違う。
NISA口座内の利益は、そもそも課税対象にならない。
例えば、NISA口座で50万円の利益が出た場合、税額は0円だ。
一方、課税口座で同じ利益が出た場合は、
50万円 × 20.315% = 101,575円
この差は大きい。
ただし、NISAでは損失が出ても損益通算や繰越控除はできない。
NISAは、税金を減らす仕組みではなく、最初から発生させない制度だ。
課税口座の節税とは、考え方を分ける必要がある。
節税の本質は設計と記録にある
ここまで見てきたように、株式投資の節税は派手なテクニックで差がつくものではない。
差が出るのは、
・損失を記録しているか
・確定申告をすべき年を判断できているか
・数字で比較して意思決定しているか
この3点だ。
税金は、利益が出た後に慌てて考えるものではない。
年間損益を見ながら、申告するかしないかを判断するプロセスそのものが節税になる。
この記事で扱った内容は、一度理解すれば毎年使い回せる。
株式投資で得た利益を守るという意味では、売買ルールと同じくらい税金の扱いは重要だ。
ここまで読んだあなたなら、来年の確定申告を感覚ではなく計算で判断できるはずだ。
株式投資の節税は仕組みを理解した人から静かに効いていく
株式投資の節税は、派手な世界ではない。
税率を劇的に下げる方法も、抜け道のような近道も存在しない。
株式の譲渡益にかかる税率は20.315%で固定されている。
この前提は、すべての投資家に共通だ。
差が生まれるのは、税率ではなく、損失や配当をどう扱うかという設計部分になる。
ここで、節税が投資人生全体に与える影響を、数字だけで整理してみる。
株式投資を30年間続けると仮定する。
その間、毎年必ず利益が出るとは考えにくい。
仮に、利益が出る年が全体の3分の2。
損失が出る年が全体の3分の1だとすると、
30年 × 3分の2 = 利益年 約20年
30年 × 3分の1 = 損失年 約10年
になる。
次に、損失年の規模を仮定する。
1回あたりの平均損失を30万円とする。
損失総額は、
30万円 × 10年 = 300万円
この300万円を、確定申告によって繰越控除として活用できた場合、
将来の利益と相殺される。
節税効果は、
300万円 × 20.315% = 約60.9万円
になる。
次に、配当による調整効果を加える。
配当を受け取る年を30年のうち20年と仮定し、
1年あたりの平均配当金を10万円とする。
配当総額は、
10万円 × 20年 = 200万円
このうち、
譲渡損失がある年に申告分離課税を選び、
損益通算できた割合を半分と仮定すると、
200万円 × 2分の1 = 100万円
この100万円分について、源泉徴収を回避できる。
配当部分の節税効果は、
100万円 × 20.315% = 約20.3万円
ここまでを合計すると、
損失繰越による効果 約60.9万円
配当調整による効果 約20.3万円
合計 約81.2万円
この金額は、売買回数を増やした結果でも、リスクを取った結果でもない。
制度を知っていて、使える年に使っただけで生じる差だ。
特定口座(源泉徴収あり)は便利だが、思考停止の道具ではない。
確定申告をする年としない年を分けるだけで、この程度の差は現実的に生まれる。
ここで一つ、明確にしておく必要がある。
節税と脱税は、似ているようでまったく違う。
今回扱ってきた、「損益通算」「繰越控除」「配当の申告方法の選択」はすべて、国税庁が制度として認めているものだ。
申告をしない、事実を隠す、虚偽の計算をする行為とは、次元が違う。
長く相場に残るつもりなら、グレーな発想に寄らないことも、立派なリスク管理になる。
節税とは、税金を無理に減らすことではない。
制度の中で、払い過ぎないように設計することだ。
株式投資は、短期的な勝ち負け以上に、続けられるかどうかが重要になる。
税金の扱いは、その継続性を静かに左右する。
来年の確定申告を、面倒な作業として迎えるか。
それとも、数字を確認する機会として迎えるか。
その差は、時間とともに確実に積み上がっていく。
この記事が、あなたの投資人生における静かな差を生む一助になれば嬉しい。
この記事では、国税庁が公開している一次情報を前提に、株式投資の利益にどのような税金がかかり、どこまでが現実的な検討範囲なのかを正確に整理しています。
