「思考メソッド」というと、横文字混じりで、少し抵抗感を感じられるかもしれない。
だが、難しく考えないでほしい。
ここでは、実際に外資系金融機関で日々、大金を動かし続け、利益を確定し続けてきたトレーダーの素の思考回路と、収益性を高める上で効果的な思考などについて、少しでもご紹介できればと思う。
マニュアル本のように、「このような手順で考えるべきだ」というような話をするつもりはない。
そして、本稿でご紹介する思考メソッドは、投資全般に関わることであって、株式投資だけでなく、FXや不動産投資にも用いることができる。
そればかりか、ビジネス全般においてその重要性が叫ばれて久しい、「業務標準化」にも通じる部分がある。
もっとも、本稿の思考メソッドを読んだからといって、個人投資家の皆さんが、直ちに常勝トレーダーに変身できる訳ではない。
具体的な取引手法(ロジック)については、本稿で触れないので、予めご了承いただきたい。
勝負をする前に徹底的に「ロジック」を考える
プロは、「目の前の勝負に勝つこと」よりも、「再現性の高いロジックを考えること」に対して、時間と労力を費やす。
もちろん、一勝、一勝の積み重ねが大きな実績になるわけだが・・・そもそもの話として、それらの勝利の積み重ねは、ロジックがあってこそ、目標から「事実」へと自らの実力によって変化させていけるもの。
したがって、プロは、目の前の一勝を淡々ともぎ取っていくし、負けて次の勝負へ移るべき時には、淡々と損切りを執行する。
そう、全ては「ロジック」に従って。
目の前の一勝よりも、ロジック通りに投資することにこだわる
投資のプロは、目の前の一勝には全くこだわらない。ロジック通りに投資することに、徹底的にこだわるのだ。
先ほどから何度も登場する「ロジック」というキーワード。このキーワードは、非常に重要だ。
ここでいうロジックとは、プロ投資家にとってビジネスモデルのようなものだ。つまり、その人でなくても、そのロジックに沿って粛々とトレードを行えば、誰でも同等の成果を出すことができる。
まさに、それがプロが目指すべき理想の投資の在り方だ。そのため、現に近年では、ICT技術やAI(人工知能)の発達に伴い、トレードの自動化への試みが、以前にも増して盛んになっている。
大手外資系金融機関のトレーディングの実務を担うのは、今や「PCプログラム」だ。
そのプログラム、いわゆる取引のロジック(AIの脳みそ)を開発するのが、大手外資系金融機関の運用担当者や運用部門のプログラマの主要な仕事の一つとなっている。
私は、外資系金融機関から転職し、小さな会社で働いていた時に、経営層と共にビジネスモデルについて議論することが多々ありました。
確かに、ビジネスモデルと投資のロジックには、考え方の根本部分で通じるところがありましたね。
ロジックも無く、相場の荒波に入る者は「カモ」
確たるロジックも無い状態で、厳しい相場に突入する素人の個人投資家は、大手外資系金融機関の運用担当者にとって、まさに「絶好のカモ」だと言わざるを得ない。
個人投資家であれば、「どうして、自分はこうも簡単に投資で資金を溶かしてしまうんだろう。」と思ったことはないだろうか。投資に本腰を入れて資金を投じた者であれば、一度は、そう思ったことがあるはずだ。
その答えは簡単。
個人投資家の皆さんが、大手外資系金融機関の強力な投資戦略・ロジックに対して、対等に抗い勝負できるだけの高度なノウハウを持たずに相場へ参戦したことが、資金を溶かしてしまった大きな原因だ。
もし、現在も「ロジック」を持たずに投資を続けているのであれば、一旦、今すぐに投資の手を止めよう。
そして、ロジックを練ることに時間と労力を注ぐべきだ。
プロからすると、ロジックを持たずに投資をするなんて信じられない!
Oh, my God!
お前は、元プロだろ。
肩書きで判断するならそうですね。
とはいえ、今も、プロとして仕事をしていた当時と、ほとんど変わらない投資パフォーマンスを出していますよ。個人投資家として。
ちなみに、ロジックの作り方は?Please give me a clue.
「ロジックを作れ」と言われても、そもそも、これまで全くロジックを作ったこともない・・・ロジックと縁もゆかりもないという方も、読者の皆さまの中にはいらっしゃるかもしれない。
そこで、「思考メソッド」という本題から横道にそれるが、ロジック作成の手順をほんの少しだけ、「チラ見せ」してみよう。
過去の価格変動が将来に再現されるとは限らない。
しかし、多くの市場参加者が、過去の値動きを参考にして将来の金融商品価格を「読もう」としている。その為、過去の値動きと似た動きが、必然的に繰り返される。
そこで、過去の価格変動の情報を徹底的に収集しよう。今は、誰もが、株価チャートや為替レートといった情報を証券会社から無料で入手することができる。
不思議と繰り返される「似た値動き」が、いくつも見つかるはずだ。
数分で見つからないなら、数時間、共通点が見つかるまでチャートと睨めっこしてほしい。
共通点が見つかっても、それが過去のものである限り、その情報だけをもとに将来の稼ぎに繋げることはできない。
そこで、そのような値動きが発生するのを事前に読む方法を考える必要がある。
つまり、「どのような条件の下」でそのような値動きが再現されるのかを研究するのだ。まずは、そのときの状況を徹底的に調べ尽くし、仮説を立てて検証するといったことを繰り返す。
値動きを「読む」ための仮説を立てたら、それを実際の値動きの中で検証していく。
システムトレードでは、これを「バックテスト」という。何十回、多い時には何百・何千回といったバックテストを繰り返し、仮説を検証していく。
個人投資家の間でも、システムトレードが盛んに行われるFXの場合、バックテストはMT4というフリー・ソフトウェアで行うことができる。
なお、MT4を用いた「バックテストのやり方」については、当サイトの下記記事を参考にしてほしい。
ここでようやく、リアルマネーを使ってロジックに基づいた投資を行うことになる。
もっとも、慎重に投資を行いたいのであれば、「デモ・アカウント(実際の金融商品の値動きに近い動きをする、仮想の口座。実際のお金を使わずに利用できる。)」で、運用のシミュレーションを行って、そのロジックが思い通りの成果を出せるものであることを確認しよう。
ちなみに、本稿を執筆する私自身も、大手外資系金融機関で多くのロジックを作成し、実際に資産運用の実務で収益を上げてきた。
プロの投資は「計算できる投資」でなければならない
ここまでお読みいただければ、ロジックの大切さは既にご理解いただけたことだろう。
では、なぜ投資のプロフェッショナルは、ロジックを大切にするのか・・・それは、投資のプロは、「一時の成功」ではなく、「成功者であり続けること」を望むし、そうでなければならないからだ。
大手外資系金融機関では、稼げないトレーダーは、すぐに解雇されてしまう。
仕事としてトレーディングに取り組む以上、稼ぎ続けることが「ベターではなく、マスト」なのだ。
それに、計算できない投資をしていたら、自社の株主に対する説明もつかない。特に上場企業であれば、業績予想もまともに立てられないようでは、もはや、会社として成立しなくなる。
つまるところ、「計算できる投資」をすることが、投資のプロにとってはマストなのだ。
そのために、投資のプロは、再現性の高いロジックを大切にするし、株式投資や外国為替ディーリングのロジックを磨き続けることに対して、全神経を注ぐ。
外資系金融機関は、本当にドライですよ。日本企業とは違い、突然、解雇を言い渡されることもザラにありますからね。
仲の良かった同僚が、何人もクビになっていきました・・・。
迫りくる「リスク」も精緻に計算して備える
リスクとは、不確実ではあるものの、測定可能なもののこと。
全くもって測定不可能な「真の不確実性」とは区別して考える。
ちなみに、リスクは「悪いこと」について使われることが多いが、「良いこと(いわゆる、ラッキーなこと)」もリスクのうち。
投資という、あまりにも不確実かつ不安定な世界で個人投資家が生き延びるには、それらの「善し悪しのあるリスク」の管理を徹底せねばならない。
そして、リスク管理は、結果論的で対症療法のような後手後手の対応をするのではなく、予め再現性の高い仕組みに組み込んでおく必要がある。
このリスク管理を究極的に突き詰め徹底したものが、いわゆる「保険」という金融商品だ。
いわゆる保険は、人類が編み出した「リスク学」の産物だといえよう。
アクチュアリーらが、あらゆるリスクを事前に想定し、精緻に計算し尽くし決して破綻しないよう、保険商品は設計されている。
実は、彼らと同じような「リスク計算」を外資系金融機関を中心に、投資の世界でも行うようになって久しい。
ここで詳しいリスク管理のノウハウを書くのは、紙面の都合や機密保持の観点からも差し控えるが、そういった取り組みをしている機関投資家が、現にマーケットの「向こう側」に存在するということは、ご認識いただきたい。
肝に銘じよ!自分を中心に世界は回っていない!
素人の個人投資家と話をしていると、あたかも「自分を中心に世の中が回っている」かのような発想をしている方も、一定数いらっしゃるように感じる。
例えば、「含み損が嵩んでいるから・・・損切りをしようか迷う」などという声を聞くことがあるのだが・・・投資のプロフェッショナルの視点では、「おいおい、正気か?」と思ってしまう。
株式市場や為替相場は、貴方の懐事情を勘案するどころか、そのような個人的事情は完全に無視して、常にマーケット中心の物語が紡がれている。
相場と無関係な事実を、トレードをする際に判断の中心に据え置くのは、非合理的なので、やめておこう。
金融商品の価格変動が、上がるのか・・・下がるのか・・・「それだけ」をロジックに基づき予測し、その予測に沿って合理的な判断を下すことだけに集中しなければならない。
- 下がるなら、売る。
- 上がるなら、買う。
たったそれだけのことだ。
そこに、迷う要素は1ミリも存在しない。
もっとも、確たるロジックさえ手元にあれば・・・の話だが。
個人投資家の皆さんが、合理的な判断を淡々と下し続ける準備ができていないなら、いつまでたっても皆さんは、大手金融機関の餌食。
いわゆる「カモ」であり続けることになるだろう。
このサイトとご縁があった皆さんには、是非とも「勝ち組」になっていただきたいです!
みんなで、稼ぎまくろうぜ!
【まとめ】投資のプロの思考メソッド
要するに、「トレードはロジックに始まり、ロジックで終わる」ということだ。
言語化された取引手法、いわゆる「ロジック」と無縁の投資などというものは、投資のプロからすると、とてもではないがビジネスとは言えないし、全く想像できない。
- 全ての取引は、ロジックに従って冷徹に。粛々と取引を執行し続けよう。
- ロジックがないなら、一旦取引を中止しよう。
- まずはロジックを作ることに全力を。
- 確たるロジックがあれば、投資成績を事前に予想・計算できるようになる。
- むしろ、予め投資成績を、一定程度は計算できなければ、それが再現性のあるロジックとは評価できない。
- リスク管理も、できれば、投資のロジックに組み込んでおこう。