北欧3カ国の消費税は、比較的高水準
フィンランド、ノルウェー、スウェーデンは、「北欧3カ国」と呼ばれ、社会保障が手厚いことで知られる。
もちろん、手厚い保障を維持するには、多くの税金が必要だ。そのため、「さぞかし、国民の不満も・・・燻っているのでは?」と思いきや、北欧3カ国では、国民の幸福度が高いことでも有名である。
北欧3カ国の主要な財源は、消費税だ。
- フィンランド:標準消費税22%、食料品消費税17%
- ノルウェー:標準消費税24%、食料品消費税12%
- スウェーデン:標準消費税25%、食料品消費税12%
これに対して、日本の消費税は下記の通り。
- 日本:標準消費税10%、食料品消費税8%
北欧3カ国の消費税は高い。
しかし、この数値だけを単純に見比べて判断してはならない。
日本の政治家は、都合の良い部分だけを取り出してきて増税するのは、得意なようですからね。
北欧3カ国と日本の「国民負担率」の比較
ところで、「国民負担率」という言葉をご存じだろうか。
国民負担率についても、北欧3カ国と日本を比較してみよう。
日本の2023年(令和5年)の国民負担率は、46.8%で、2020年(令和2年)の47.9%からほぼ横ばいだ。
ちなみに、北欧3カ国の国民負担率は下記の通り。
- フィンランド:59.7%
- ノルウェー:53.4%
- スウェーデン:54.5%
- 北欧3カ国の2023年版最新データが見つからない為、2020年のデータを引用しています。
出典:財務省HP 税制(国の税金の仕組み)資料
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/020_2.pdf
北欧3カ国の平均値は、約55.87%だ。
{(59.7+53.4+54.5)/3}=55.87%
日本との差は、約7.97%となっており、国民負担率については、両者で殆ど差がない。
55.87-47.9=7.97%
国民負担率とは?
日本政府 財務省によると、国民負担率とは、「租税負担及び社会保障負担を合わせた義務的な公的負担の国民所得に対する比率」のことをいう。
国民負担率の推移
出典:財務省HP 負担率に関する資料
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a04.htm
日本の国民負担率は、ここ数年こそ横ばいで推移しているものの、平成時代には、常に上昇基調だった。そして、これからも制度設計を抜本的に見直さなければ、上昇基調は持続するものと専門家らは予想している。
つまり、国民が負担する「社会保険料」等は、今後、増えることはあっても、そう簡単に減ることはないと考えられる。
まさに、日本存続の・・・いや、「日本国民の家計破綻の危機」が、目の前のすぐそこまで来ているといっても良いだろう。
政治家や日本国民が、問題解決を先送りにしてきたツケが、いよいよ回ってきたと言える。
I hate to see my beloved Japan suffer from a less sustainable social security system. Depending on how Japan’s social security system develops in the future, Japanese stocks will crash. OMG!
日本語で頼む・・・。
日本の国民負担率は、北欧とほぼ同水準
北欧3カ国は、子の出産から大学進学に至るまで、パッケージ化された無償の公共サービスが多数準備されており、国民の満足度は高い。
まさに、北欧では、「全国民で子育て世代を支えよう」という合理的かつ持続可能性の高い仕組みになっている。
ところが、日本はどうだろうか・・・。
日本は、北欧3カ国と比べても、国民負担率が殆ど変わらない高水準(その差、約7.97%)だ。しかし、日本の場合は、巷の声を聞く限り「北欧と同様に国民の満足度が高い」とまでは、決して言えないようだ。
例えば、日本では、現役世代(若者世代)に「お年寄りを支えさせよう」という思想に基づき設計された賦課方式の老齢年金がある。このような仕組みを見ると、現実に目の前にある状況と制度設計にミスマッチがあると言わざるを得ない。
日本では、「マクロ経済スライド」で、高齢者の受け取れる年金が目減りすることがありますよね。
そうなんですよ。日本の年金は賦課方式なので、マクロ経済スライドの発動で、その時の現役世代の負担は少し減るけど・・・。
一時的に負担が減るとはいっても、高齢者に支給される年金が減る様子を見れば、現役世代も、目の前の負担が減ったからといって手放しに喜べませんよね。政府への「不信感」が募るのも無理はありません。
確かに北欧にも賦課方式の年金制度はあるし、北欧でも少子高齢化が徐々に進行している。
しかし、北欧の一部の国では、国民年金制度が無く、税を財源とした給付金制度を取るなど、現役世代だけに負担が偏らないよう工夫が施されている。
一方で日本では、少子高齢化という、不健全な人口ピラミッドのもとでは、到底維持しがたい設計ミスの社会保障制度が現実に運用されている。
しかも、日本の少子高齢化現象は、北欧と比べても極めて深刻だ。
このため、とりわけ「現役世代」の国民負担率が高いけれども、その恩恵を享受できる世代が「お年寄り」に偏ってしまい、多くの現役世代が名状し難い不満を燻らせ、更には、将来に対する不安を抱えながら日々を過ごしているのではないだろうか。
北欧の年金制度はどうなっているの?
日本の年金制度について言及したので、北欧の年金制度についても見てみよう。
ここでは、北欧3カ国の中でも「フィンランド」の年金制度について見ていこうと思う。
フィンランドの年金制度
【国民年金】
国民年金の制度が存在しない。
代わりに「フィンランド社会福利局(KELA)」という政府機関から、税を財源として老齢基礎年金に相当するお金が支給される。
【厚生年金】
日本と似た制度があり、会社と労働者が負担する。
但し、会社が3分の2を負担し、労働者は3分の1を負担することとなっている。ちなみに、保険料率は一般企業労働者の場合には、6.75%となっており、日本の18.3%よりもかなり低い負担水準だ。
国民年金 | 税金から支給 | ||
厚生年金 | |||
厚生年金保険料率 | 18.3% | 6.75% | |
国民負担率 | 47.9% | 59.7% | |
(内租税負担率) | 28.2% | 43.2% | |
(内社会保障負担率) | 19.8% | 16.5% |
岸田政権は、なぜ「少子高齢化対策」に力を入れているの?
ここまでお読みいただければ、岸田政権が少子高齢化対策に注力する理由が、もうお分かりでしょう。
少子高齢化対策は、まさに、政府が先送りしてきたけれども絶対に看過できない、喫緊の課題だからだ。
65歳以上人口を全人口で割った「高齢化率」という指標がある。2021年時点で、日本はなんと、世界第2位だ。
いかに日本の人口ピラミッドが歪で、制度の前提とすべき実態と、制度そのものが噛み合っていないか・・・数値を見るだけでも、容易にご想像いただけるのではないだろうか。
出典:グローバルノート – 国際統計・国別統計専門サイト 統計データ配信『世界の高齢化率』
https://www.globalnote.jp/post-3770.html
北欧の国・フィンランドも、高齢化率 第4位にランクインしているのだが・・・
今のところ、日本ほど歪な人口ピラミッドではない。
日本の人口ピラミッドは、下記のように、完全なる「ひょうたん型」になっている。
日本、フィンランド、全世界の人口ピラミッド比較
出典:PopulationPyramid.net Population Pyramids of the world in 2023
https://www.populationpyramid.net/
日本の人口ピラミッドのピークを見てみましょう。50代あたりが一番人口比率が高くなっていますね。
これら3つの人口ピラミッドの比較において、一番不健全で社会保障制度の持続可能性が低いのは、日本だといえるでしょう。
新興国を含めた全世界の人口ピラミッドは、旧来の社会保障制度を前提とすれば、最も持続可能性が高い状態だといえるよね。
まとめ
- 日本と北欧の国民負担率を比べても、大きな差が無い。
- 北欧の社会保障制度に対する国民満足度は高い。しかし、日本はそうとも言えない。
- 北欧でも少子高齢化は進行中ではあるが、日本ほど深刻ではない。
- 日本のように極端な少子高齢化現象が生じると、賦課方式の年金制度のもとで大きな世代間格差が生じる。