英国のEU離脱をあらわす言葉
EU(欧州連合)からイギリスが離脱しようとしており、これをあらわす言葉がブレグジットである。イギリスを意味する「Britain」と離脱を意味する「Exit」で構成される造語だ。
2016年6月、イギリスでは、EU離脱の是非を問う国民投票が行われた。結果は「52%」対「48%」で、離脱派が勝利した。投票率は71.8%であり、3000万人以上が投票したことになる。
残留派の敗北を受けて、EU離脱に反対していたキャメロン首相が国民投票当日に辞任してしまった。後任のメイ首相は、欧州を相手に「ブレグジット交渉を優位に進める」ため、国内世論をまとめる必要があると考え、総選挙を前倒して実施した。ところが、与党(保守党)は総選挙で敗北し、議会で過半数の議席を失った。
イギリスはEUから離脱するために、「EU基本条約(リスボン条約)」の第50条を発動させ、離脱条件等の合意成立へ向け、2年間にわたって交渉してきた。交渉が延長されない場合、イギリスが正式にEUを離脱するのは2019年3月29日である。
2019年3月27日に英国で投票
英国下院は2019年3月27日、メイ首相のEU離脱協定に代わる議員提出8案に対する「示唆的投票」を行ったが、いずれの案も過半数を得られず否決された。
3月27日は異様なことに、ブレグジット審議の主導権を議会が握っていた。提出案の中身を見ると、「2度目の国民投票」「4月12日に合意なく離脱」など、さまざまだった。
一方で、メイ首相は「首相自身がEUとまとめた離脱協定」が可決されれば、辞任するという意向を示している。なお、この協定はこれまでに2度、否決されている。
EU離脱は2019年4月以降へ
2019年3月38日(木)の日本経済新聞(夕刊)の報道によると、英議会は、EUからの離脱時期を3月29日から4月以降に延期することを決めた。なお、離脱の具体的な方針は、何も決まっていないようだ。
保守党のメイ首相は、自身の「離脱案」を英議会が承認した場合には辞任する考えを表明しており、3月29日までに離脱案の可決を目指している。しかし、与党の反対派の多くは反対の姿勢を変えないと表明しているので、「離脱案可決」のめどは立っていない。
2019年10月へ離脱延期
イギリスは、3月29日にEUを離脱する予定だったが、下院で離脱協定が承認されず、メイ首相はEU基本条約(リスボン条約)50条に基づく離脱交渉期間の延長を要請した。
EU側は4月12日までの延長を認めたものの、期日までに協定が批准されなかったため、2度目の延長が決まった。そこで、メイ政権は現在、最大野党・労働党と譲歩案をまとめるために協議を続けている。
野党労働党との協議や離脱協定修正への取り組み
メイ首相は、野党の労働党と粘り強く協議したり、EU離脱へ向けた協定案の修正などに取り組んだ。
しかし、徐々に与党内を含め、政権内から波及し国民の支持を失ってしまい、短期間で党首を辞任する事態となってしまった。
選挙によりジョンソン首相が就任
懸案事項を払拭してEUと合意
ジョンソン首相は、かねてから議題に挙がっていた「バックストップ」に関して、代替案を示すなどして離脱協定案をまとめ、協議を行った末に10月17日にようやくEUと合意に至った。
「まとめ」きれず、延期申請へ
英議会では、関連法案の成立まで「新離脱協定案」の採決を保留するという動議が成立し、10月19日までの離脱協定案の承認ができなくなってしまった。
その採決見送りにより、ジョンソン首相は「2019年10月19日までに離脱協定案を承認できなかった場合」にイギリス政府に対して「離脱の延期を義務付ける」という内容の離脱延期法に基づき、離脱日の延期をEUに対して求めたことで、最長で2020年1月31日までの離脱延期が承認された。
解散総選挙の実施
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迷走するイギリス
イギリス国民投票によるEU離脱問題をテーマにした書籍だ。
イギリスのEU加盟から現在までの歴史について解説している。イギリス外交史・国際政治の第一人者といわれる著者が、歴史的背景からイギリス政治社会とヨーロッパを展望する。慶應義塾大学法学部教授 細谷雄一著、2017年6月発売(慶應義塾大学出版会)。
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